グランドピアノの整調
- 棚板筬合わせ
- 弦合わせ
- 打弦点調査
- 鍵盤調整
- アクション調査
- 働き調査
- ジャック調整
- 鍵盤上面
- ストローク
- レットオフ
- 鍵盤深さ
- ドロップ
- バックチェック調整
- ハンマーバックストップ調整
- レバースプリング調整
- ダンパー調整
- ペダル調整
- ダンパー総上げ
- ダンパーレバーストップレール調整
- 総合検査
棚板筬合わせ
棚板筬合わせ
グランドピアノのアクションは鍵盤の上に取り付けられ、筬と言う枠に固定されています。
それらはピアノの棚板の上に乗り、内部に収められております。
棚板と筬は環境の変化やアクションの重み、又はペダルを踏む動作などの影響で、棚板と密着出来なくなることがあります。
フロント部の調整
筬のフロント部分を指で叩き、その音の違いで浮きを判断します。
始めはキーベットスクリューを突き出す事で、フロント部分に浮きを作作ると良く分かります。
バック部の調整
鍵盤を取り外した状態で、調整をします。
筬を指で叩いて音で判断をします。
精密に調整するには、薄い紙を筬と棚板の間に挟みこみ、引き抜く加減でその隙を判断する事もできます。
バック部の調整には、削るか貼るしか方法は有りません。
下側の調整
①鍵盤を全て取り去り、筬バネも取り外して行う。
②鍵盤は取り外すが、筬バネは取り外さずに行う。
③上記方法に、拍子木を取り付けて行う方法。
上側の調整
高音側から順に番号を振り、2、3、4、5、1の順で通常は調整する。
低音端の調整時は、軽くソフトペダルを踏む。
バランス部の調整
中央部分はキーベットスクリュードライバーで調整できるようになっています。
上からと下からの調整が有ります。
下側の調整は色々の調整方法があり、どれが正しいかは一概に言えません。
最終的には、タッチや音など総合的に判断するのが良いでしょう。
弦合わせ
ハンマー弦あわせ
ハンマーの走りを、直します。
ハンマーが弦を垂直に打弦するように、フレンジの裏に紙を貼ってなおします。
場合によっては、フレンジを鑢などで削ることもあります。
複数のハンマーを定規などで上下に動かした時、左右の間隔に変化の有るものが走っています。
ストローク分動作するように板を加工して使用すると、この作業が楽に出来ます。
静止状態で左右の間隔が揃い、上に移動した時に間隔が乱れれば、異常があると言うことです。
次にシャンクを暖めて、ハンマーが弦を垂直に叩くように調整します。
暖めるには、シャンクプライヤーもしくはアルコールランプまたは、ガスライターがあります。
複数の弦を同時に叩くための、作業の一つです。
音の立ち上がりを決定する重要な作業です。
次に、ハンマーの間隔を弦に合わせます。
全てのハンマーが、等間隔になるようにします。
弦の間隔が悪い場合は、弦を移動します。
弦を移動できない場合は、ハンマーの間隔を優先するために、走らせる事も有ります。
打弦点調査
打弦点を調べる
ハンマーの打弦する前後の位置が、正しいか調べます。
前後位置を移動してもっとも良い音のするところに移動します。
高音が中音とバランスよく発音する必要があります。
高音域のセクション全体を、調べます。
バランスを浴するために、個々の調整が必要になる事も有ります。
鍵盤調整
鍵盤の調整
ここでは、鍵盤がスムーズに動くように調整します。
写真ではアクションが付いていますが、取り外して行います。
鍵盤が傾いている場合は、バランスキーピンを正して直します。
次に隣同士の鍵盤の間隔を均一に調整します。
(黒鍵の間に指が入り安いよう、演奏者に合わせて調整しなおす事も有ります。)
キーバランスピンと鍵盤ブッシングクロスの隙を、
0.2mm~0.3mmに調整します。
キーフロントピンと鍵盤ブッシングクロスの隙を、0.5mmに調整します。 いずれも鍵盤の動きがスムーズで有り、ブレを感じないことが重要です。
アクション調査
アクションの点検
アクションのネイ類を、全て確認します。
フレンジのネジは合計で176本です。
このほかアクションブラケットのネジも確認します。
この折、取り付け位置や角度の悪いものは、直しておきます。
働き調査
働きが正しいか調べます
F45鍵の打弦距離やレットオフ、ナラシ、アガキ等を基準値にそろえ、タッチや音が十分満足出来事を確認する。
鍵盤を抑え進み、ハンマーがバックチェックに捕らえられ、尚鍵盤に0、3mmの余裕がることを理想とします。
又、経年変化を予測し、余裕のある設定を考慮します。
ジャック位置調整
ジャックの角度と高さを調整
鍵盤の運動をハンマーに伝える為、ジャックの角度をハンマーローラーの芯板と直線にします。
スムーズなタッチと質感のある音を作る為に、慎重に調整をします。
次に、レピティションレバーとの高さを0、2~0、3mm低く調整します。
高さ調整後、ジャックをローラーから抜いた後、スムーズにローラーの下に戻る事を、必ず確認します。
鍵盤上面
鍵盤の上面を調整
鍵盤の上面を調整します。
鍵盤は1/2押し下げた時、水平になるように設計されています。
棚板より、キートップ下面が64mmとなります。
キートップの厚みにより、その上面に違いが有ります。
暑さ0、04mmの紙パンチングを使用して揃えます。
紙パンチングでの調整後、パンチングフェルトの圧縮により微調整をします。
ハンマーストローク
ハンマーストロークの調整
打弦するハンマーの運動量を、46±1mmに調整します。 タッチと音色のベストを探る為、増減をして判断します。
レットオフ
ハンマーレットオフ位置調整
鍵盤を静かに押し下げた時、ハンマーが弦に限りなく近づく位置を決めます。
一般には、高音から低音の寸法が、2~3mmです。
このとき鍵盤は、8mmほど押し下げられています。
鍵盤深さ調整
鍵盤深さ調整
鍵盤の深さは、10±0、5mmです。
演奏者の好みがあるので、レットオフ、ストロークとの関連がもっとも悩める調整です。
長の形状にも寄りますが、拍子木は取り付けて行うのが懸命です。
薄いパンチングの数を2枚づつ使用しておくと、後々の調整に便利です。
黒鍵は、白鍵のアフタータッチに合わせて調整します。
ドロップ等の調整を先にした方が、より正確に調整できます。
ドロップ
ドロップ調整
ドロップは、レットオフより2~3mmに調整します。
柔らかなトゥリルを演奏する時は、この調整が重要になります。
バックチェック調整
バックチェック調整
バックチェックはハンマーウッドを直接咥える為、この角度をハンマーウッドに合わせます。
このとき使う道具を、「ご機嫌直し」と言います。(人間には使えません。)
ウッドに平行にしても咥えの悪い場合は、ハンマーウッドにヤスリ溝を作ります。
ハンマーバックストップ調整
ハンマーバックストップ
寸法は、ストロークの1/3です。
ピアノから引き出した状態で、ドロップ位置より10mmほど下に合わせます。
数ミリ差のサンプルを造りピアノに収めた状態で、弦からの距離を確認します。
この方法で、各セクションの端に基準を作ります。
低音と注音は中間にも、基準を作った方が綺麗に仕上がります。
右手で弦の代わりをして、左手はmfで3キーづつ弾きます。
レバースプリング調整
レバースプリング調整
アクションを置くスペースが無い場合、棚板の上で前後を入れ替えて作業をします。
大きなピアノの場合を考えて、始めから後ろ側からの調整になれた方が良いと思います。
レピティションレバースプリングの強さは表現しがたく、強すぎず弱すぎずである。
ハンマーをバックストップさせ鍵盤から手を離したときに、ショックを手に感じないことが重要です。
弱すぎるとジャックがローラーの下に戻れなくなり、連打ができません。
ローラーの形状によっては、強めにすることもあります。
ダンパー調整
ダンパー調整
ダンパーの弦当たり、捻れ、走りを正します。
ダンパーは2本ないし3本の弦に、同時に接するように調整します。
Wウェッジのダンパーがもっとも苦労します。
左右のフェルトの厚さが違う場合は、専用のプライヤーを使った方が楽でしょう。
ごく稀に、弦の間隔の違うものも有りますから、要注意です。
初心者は、調整可能な人の指導の下で実施しましょう。
迂闊に触ると、取り返しが付かなくなります。
良く考えながら実施すれば、難しくはありません。
ペダル調整
ペダル調整
ダンパーペダル
ペダルを踏んだとき1~2mmの隙があってダンパーが動くように調整する。
最近は隙が狭いのを好む人が多いようです。
ソフトペダル
ソフトペダルは、基の弦溝から外れて打弦するように拍子木のネジで調整する。
弦を1本分外す場合と、弦溝を外す場合の調整とがあります。
演奏者や曲によって、変えられることも有ります。
ダンパー総上げ調整
ダンパー総上げ調整
演奏時に全ての音が、同時に止まるように調整します。
ダンパーが同時に上がれば、同時に止音します。
そうならない場合もある為、同時止音を必ず確認をします。
低音側は弦振動が大きい為、若干早めに接弦した方が良い場合があります。
ダンパーストップレール調整
ダンパーストップレール調整
鍵盤を押さえきった時にダンパーの上がりとストップレールの隙を見ます。
この隙は2mmに調整します。
ダンパーペダルを踏んだときの隙と一致しない場合は、鍵盤側を優先します。
総検査
総検査
最後に必ず、全ての調整をチェックします。
ppからsfまで、柔らかな音も凛とした音も確認します。
全て確認できれば、どのような演奏にも美しい音とタッチが得られる事でしょう。
アクションの調整方法は、調律師によって違いが有ります。
上記の調整方法は一例であり、部分的にピックアップしたものです。
良いタッチと音を作るのはこれだけの調整で、終るものでは有りません。