どんなピアノが、良いピアノなのでしょう。
「美しい音色」 「弾きやすいタッチ」 「丈夫で長持」 以上のポイントを、簡単にご覧頂きましょう。
どのピアノを購入される場合も、基礎知識があれば、安心して選べます。
勿論外装も、お部屋に合うピアノを考えましょう。
又将来グランドピアノに買換えたりする時に、高く下取りできる商品とそうでない物があります。
名前を良く知られた商品の方が、無難でしょう。
ピアノは通常、鍵盤楽器に分類されますが、発音講造は弦楽器とも打楽器とも言えます。
どのような音が「美しい音」なのでしょう?「美しい」の定義は、好みがあるので難しい問題です。
どのようなタッチが良いタッチなのでしょう?これも好みの問題を考えると、一言では語れなくなってしまいます。
ピアノの寿命は、何を限度と仮定しましょう?音が出ることだけに限定すれば、半永久的とも言えます。
調律師が調整すれば、どのようにでも調整できると言っても過言ではありません。
しかし、調律師の仕事は、調整することが難しいのではありません。
お客様の好み(音色や弾き心地)に合わせて調整する事が最も難しいのです。
ピアノ選びをする際、構造や機能を気にされる方は多いと思います。
そこも重要なポイントではありますが、一番重要な事は”修理や調整がどこまで施されているのか”です。
いくら良い構造や機能の商品を選ばれても、修理や調整がきちんとなっていなければ、良さは発揮しません。
どこまで修理や調整を行っているのか、お客様自身の目でご確認上、お選び下さい。
私たちは、ピアノ選びのお手伝いをさせて頂いておりますので、分からない事はご質問下さい。
ここからは、音色やタッチの違いを、考えましょう。
美しい音色 --- 弦
ピアノ線
1本の弦の張力は、およそ90Kg位です。その数は、230本前後あります。
弦の張力は温度変化による音の狂いを避けるため、出来る限り一定に設計されています。
弦の材質は、殆ど変わりがないと言ってもよいでしょう。
良く知られているのは、スズキ(国産)かレスロー(ドイツ製)の弦です。
アップライトピアノでは、この差は分かり難いかもしれません。
グランドピアノでは、柔らかな伸びの有る音が確認できるでしょう。
高音側の長さは、どのピアノも殆ど同じです。最高音の弦長は、50mm強です。
弦の太さは、同じように見えても、微妙に違います。
0.775~1.600mmで、23種類程有ります。
最も違いがあるのは、弦の長さです。低音弦の理想は、2m程です。
長ければ振幅が大きくなり音量が豊かになり、張力も強くなり弦振動の減衰が遅くなります。
従って、サイズの大きなピアノ程、豊かな音量を得ることが出来ます。
弦の材質は良くても張弦の状態が悪くては、意味がありません。
張る角度や間隔等、重要な注意点がたくさんあります。
チューニングピンのコイル部分が均一なら、良い目安になるでしょう。
美しい音色 --- 響鳴板
美しい響鳴板
響鳴板はピアノの音を左右する、重要な板です。
美しい柾目の松材を使います。(ドイツ松・エゾ松・スプルース等)
響棒に助けられ、僅かなふくらみ(クラウン)を持って張り込まれています。
経年変化でこのクラウンが無くなると、音は伸びが悪くなってしまいます。
また、湿度の変化により、ひび割れしやすくなります。 この響鳴板のクラウンを保つために、支柱とフレーム等のバック部が重要な役目を果たします。
バック部は、ピアノの寿命と密接な関係が有ります。
外観は綺麗でも、中は合板の響鳴板も低額機種に多く見られます。
現在の合板技術では、削ってみないことには見分けることはほぼ不可能でしょう。
美しい音色 --- ハンマーフェルト
× 溝が付いたハンマーフェルト
○ 綺麗になったハンマーフェルト
ハンマーフェルトは、文字通り弦を叩くフェルトです。良いフェルトはメリノシープの胸毛が使われます。
柔らかければ柔らかな音を出し、硬ければ硬い音を出します。又その弾力性も、音に大きく影響します。
よく使われたハンマーフェルトは、弦に当たる事で磨耗し弦の跡が付きます。
そのままでは、打弦時に弦との接触時間が長くなってしまいます。
接弦時間が長くなると、その音に含まれる周波数の高い倍音は、打弦時に発音し難くくなります。
倍音構成が変わり、音色が変わってしまいます。
また、接触面が広くなるため、不安定な弦振動を発生させます。
これも高い倍音程、影響を受け易くなります。
打鍵の強弱により、音色を揃えて弾く事は難くなります。
さらに溝が深くなると、ハンマーは打弦時に左右にブレを起こし易くなります。
そのまま使うと、他の部品をも傷める可能性が出てきます。
タッチ --- 鍵盤
× 鍵盤の高さが不揃い
○ 綺麗に調整された鍵盤
鍵盤は、白鍵が52鍵、黒鍵が36鍵、合計88鍵あります。
鍵盤の調整は、直接手に触れてタッチを感じ取る場所なので、とても重要です。
バランスピンとフロントピン2本のピンにより、左右前後の動きを制御してます。
傾きを直し、上記ピンとの間隙を調整しスムーズに動くようにします。
写真では分かり難いかもしれませんが、鍵盤の高さを一直線にします。
実際に鍵盤を、横から眺めてみれば分かります。調律師は「ナラシ定規」を、使って調整します。
この調整が精密に行われないと、後の内部調整は全てが無駄になります。
鍵盤の高さを基準に、鍵盤の深さも決まります。
どちらの調整も鍵盤の下に、紙パンチングを入れて調整をします。調整精度は、0.03mmの紙まで使用します。
鍵盤の動きは、おおよそ10mmです。
以上の調整が不十分だと、同じ音量で発音する事が出来ません。
タッチ --- アクション
精密なアクション
写真をクリックすると、アクション構造図にリンクします。
アクションは木材、金属、プラスティック、繊維、皮革等、それぞれの性質の異なる材料で構成されている為、これらの部品が互いに狂いの無い事が重要です。
アクションはピアノの心臓部であり、その調整の精密度は高い程良い商品と言えます。
部品の品質は、見た目では分かり難いかもしれません。
しかし同じ部品が並んでいるので、隣どうしの部品を比べる事が出来ます。
又同じ部品同士の隙や位置が揃っていれば、丁寧に調整されていると判断出来ます。
リニューアルの商品では、部品の磨耗や狂いをチェックする必要が有ります。
外装
美しい外装
写真は、人気の高いカワイスピネットモデルです。
お部屋を飾るインテリアとしての要素も、重要な選択の一つです。
主流は黒の艶出ピアノですが、近年木目の需要も多くなりました。
ごく最近では、斬新なデザインのものもあります。
リニューアルの商品にも、人気のデザインが多く見受けられます。
丁寧な外装の仕上がりを見ると、内部の状態も想像が出来ます。
木材の処理に不具合があると、パネル類の隙が不均衡なものもあります。
流行により、ピアノは何度も買替えをする商品では有りません。
お部屋に合った、デザインと色を選びましょう。